5月19日(土)
<ワンコの癌について>
先日長い間犬舎で頑張ってくれたヨークシャテリアのエミリーが13歳で他界した。晩年軽い白内障で年老いてはいたが、亡くなる直前まで立ち居姿は遠目にも優雅な様子を呈していた。小さいお耳が逆ハの字に(いわゆる2時10時の角度)ピンと立ち、小顔で詰まっており今では珍しいドワーフタイプのとても洗練されたヨーキーだった。彼女以外両親祖先共少なくとも3代祖は全て名だたるチャンピオンだった。それまでにもヨーキーはブリードしていたがエミリーが来てからは一気にお顔の可愛らしさ、上品さを初めとしてシルキーな毛質他当犬舎のヨーキーのレベルがアップした。現在オファーしているヨーキーはエミリーの貢献度が高い。いわゆるご先祖様のような存在だ。だが、1ヶ月前おっぱいが異常に膨れているのに気付き病院に行くと乳癌とのこと、早速手術を施したが、お腹を開けてみると子宮にも転移し脾臓や肝臓も癌に侵されていた。乳のしこり、子宮と脾臓、肝臓の一部を摘出したが、このままでいくと残りの肝臓その他に転移し余命幾ばくもないという診断。以来亡くなるまでの1ヶ月間何でも好きなものを食べさせてあげようと鳥モツや缶詰、ささ身などをあげていた。抜糸まではケージで管理していたがあとは室内の運動場で自由にさせていた。食欲がなくなり寝てばかりいるようになってリビングのサークルに移して2日目、朝には立ってオアシス(給水器)の水を飲んでいたのに夕方ふと見ると横たわっていた体の心臓が止まっていた。息絶えて間もなかったのだろう、体はまだ温かく柔らかかった。そっと抱き上げると力なく首が横に垂れた。癌といえば人間でも七転八倒の痛みが襲いモルヒネなどで苦痛を抑える処置がなされるだろうと思うが、動物だって同じように激痛を感じていることだろう。もともとヨークシャは辛抱強い犬種ではあるけれど癌の苦しみに苦悶の叫びを上げることもなく、暴れることもなく、じっと我慢をして静かに息を引き取ったエミリーは何て偉いのだろうと、今更ながらに畏敬の念を抱く。さらに、ただの可愛い子ちゃんだけでなくしっかりとポリシーを持っていたエミリーは、出産時1頭を産み落とすや否や性格が豹変し母性本能が全開した。最初の2週間くらいは子犬が触れないくらいに子供を防御する。生き様は死に様に通じる。エミリーは最後の最後まで凛として生き貫いたといえるのではないだろうか。斎場の人が引き取りに来る日の朝、亡骸を抱きしめ「エミリー長い間ありがとうね、ご苦労さん」と言葉を掛けてダンボールの蓋を閉じた。13年前秘蔵っ子だったエミリーを、無理を聞いてお譲り下さったA様には心から感謝している。
癌について私が感じていることをお話したいと思う。以下はあくまでも個人的見解なのでお間違えないように願います。当方はブリーダーで、細心の管理のもと何度かお産を経験させているので若年で癌になるワンコにはほとんどお目にかかったことがない。エミリーが13歳になって癌に罹ったのは老齢化のための自然死に近い類かも知れない。だが、知り合いのトリマーさんに聞くと、一般のご家庭で飼っている場合、トリミングに来るワンコで乳癌に罹っている子は実際的に軒並み多いのだそうである。それは犬種を問わないそうだ。そしてそれらの全部が去勢していないワンコだと聞く。乳癌は早い子は3歳位、多くは7,8歳のころに発症するようだ。初期の場合は助かることもあるが人間ほど医療が発達していないこの世界で癌による死亡はあとを経たない。以前当方からヨークシャテリアとプードルをお譲りさせていただいたある方は、1番初めに飼ったプードルが8歳くらいで亡くなったそうだが、原因は乳癌だったそうだ。それ故に2頭目のプードルには1年未満で子宮の全摘(去勢)をしたところ14歳まで生きたそうだ。その経験から当方から譲渡させていただいたヨークシャテリアとプードルは早い時期から去勢をしたのだとご報告いただいたことがある。乳癌は子宮と関係があり子宮に転移すると付近の臓器にも転移してしまい結局は早くに亡くなってしまう例が多々あるのではないかと思う。ペットでお飼いになるわんちゃんは是非早いうちに去勢をすることをお薦めする。オスはホルモンの活発になる生後7ヶ月前の6ヶ月で去勢すると諸々の煩わしさが緩和されるという。メスは獣医師によっていろいろ意見が分かれるところだが最初の生理と2回目の生理の間がベアーだという説と生後7、8ヶ月ごろの最初の生理前が良いという説、いろいろだが係り付けの獣医師に聞いてみることをお薦めする。
折りしも今年6月からは動物愛護法で、許可が下りないと有料無料に限らず繁殖→譲渡は出来ないことになるようだ。生き物を扱う以上動物愛護の観点から当然だといえよう。なぜなら私自身30数年前のやり始めの頃は数多く失敗をし、時にはワンコを死なせてしまったことが何回かあったからだ。ケージを開けた途端に手を掛けていた子犬が飛ばされて物に当たり即死してしまったり、ちょっと買い物に行っている間に小さい子が殺戮されていたり、お産の扱いでも然り、「まあ大丈夫だろう」と言うことがワンコの世界には全く通じない。お産にも多種多様な例があり、時には親子ともども亡くなったこともある。我が子は大雑把に育てたが、それが動物の養育には全く通じない。我が子はめったに病院など行ったことがなかったが、ワンコは元気がないといっては検査をしに病院に走る。小さい子ほど時間が経つと手遅れになるからだ。
今は検便も自分の顕微鏡で出来るし感染症も皆無で、ほとんどの子達が元気一杯に育っている、だが、それはいろいろ試行錯誤した賜物だといえる。一方検診だ、ワクチンだと病院に赴く時間は長い。命を預かるには獣医学や薬学、その他たくさんの知識が必要だ。従ってお金儲けのため安易にやるべきことではないとそう思う。いたいけな命がかかっているのだ。
家族の一員としてお飼いになる場合は去勢をお薦めしたい。女の子の場合年2回の生理の煩わしさが無くなるだけでなく乳癌、子宮がん他子宮内膜症、卵巣膿腫、子宮蓄膿症他の病気が防御できる。男の子の場合も前立腺癌が防げるだろう。去勢しても食事に注意すれば決して太らないのでご心配なく。
とにかく愛犬にはできるだけ健康で長生きしてもらいたいものだ。
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5月27日(日)
<ワンコとの散歩のススメ>
すがすがしい季節になった。今年は暖冬だったせいか当地では晩春にならないと咲き始めないハーブのチェリーセージが早々と緋色の花を次々開花させた。春〜晩秋、初冬のころまで長期に渡り可愛い姿を見せてくれるこのチェリーセージはお気に入りの宿根草のひとつだ。私的にはどんなにきれいな花でも花期が短い類はあまり興味がない。その点チェリーセージは一旦植えると数年は放って置いても芽を出してくれ長い間目を楽しませてくれる。玄関までのアプローチに植えているが、通るたびにあの脳天をくすぐる良い香りのシャワーを浴びることになる。時に着ている服や腕に半日も香りをとどめている。お客様を迎えるのに絶好のエンターテインメント(おもてなし)だ。
ゼラニウムやランタナも然り、こちらは、地植えは当地では無理なのでその都度購入しているが冬の訪れまでしっかり咲いてくれるのが健気で可愛い。スペインや南フランスで見たルリマツリの大木にも興味がある。去年植えたものを室内で越冬させようと試みたが世話不足で結局だめにしてしまった。仕方ないのでライラック色の苗が出回ったら一挙に買い占めようと目を皿にして狙っている昨今である。バラはオールドローズ、イングリッシュローズをカタログで何種類か購入したがワンコの世話が優先で手間不足のためmiserable roseの程度にとどめているものが多い。
朝6時業者用のゴミ出しが終わると、ティーカッププードルのハイジ(注;アルプスの少女ハイジのように明るく元気なので名付けた)とチワワのキャビア(注;あのキャビアのように黒くて小さいので名付けた。ただし、キャビアのような高級感は無し)を伴って主人と2人散歩に出かけるのが日課になっている。お散歩大好きのハイジは朝になると散歩に連れて行けと大騒ぎをする。40分の散歩の内初め10分間は嬉しさのあまり雄たけびをあげ吠えっぱなしだ(ご近所の方、ごめんなさい)。ちびちびのくせに早いのなんの、パワフルなのは人一倍(犬一倍)だ。なにしろ前足が宙にういていて私を引っ張っていく。今までは冬だし40分も歩かせたら可哀想と、主人の懐に入れて散歩していたキャビアもこのごろではハイジに促されてしぶしぶ歩いている。ハイジは帰りも門まで来ると「まだお家に入りたくな〜い!」と前足で急ブレーキを掛けて入ろうとしない。家に居ればソファーの上に上ったり降りたりピヨンピヨン跳ね回り、「ティーカップ=ひ弱」など どこ吹く風?とまさに元気一杯子ちゃんだ。彼らがいるお陰で少々サボりたいと思うときも期待を裏切っては可哀想と、ワンコのお産などにかかる以外、また雨雪以外は主人と2人+アルファーで散歩に出かけることにしている。
このお散歩歴は20年前にさかのぼる。当時学習塾を開いていた私は特に小学生のプリントの採点で長時間座っていることが多かった。採点しているとついつい横座りをしてしまう。不自然な体形が続き脊椎に無理がかかっていたようだ。気が付いたときにはヘルニアになっていた。いわゆる「ぎっくり腰」。あるとき急に立ったらそのまま正にフリーズしてしまった。一歩も歩けないのだ。ちょっとでも動けば電光石火の如く痛みが走った。痛みと不安で顔から脂汗が出てきた。とっさに会社に居る主人に電話で連絡しようと電話機まで行こうとするがそれさえ激痛で叶わない。ほんの目の前の物が取れないこの情けなさ! 一体これは何故なのだ。それまで味わったことのない絶望感だった。「アアー ウウー」呻きながらやっとの思いで受話器を取ると「これはたいへん」と察したのか、何と主人は救急車を呼んでくれたのだった。「ええー?救急車?」何とおおごとになったものだとびっくりする間もなく、それこそ近所にとどろく大げさな爆音?とともに救急車は我が家に到着したのでありました。忘れもしない大雪の降り散る寒い冬の日の出来事でありました。担架に運ばれた顔に容赦なく雪が降り注ぎ近所中の人が見守る中「ピーポーピーポー」というサイレンとともに救急車の車中の人になったのでありました。近くには銀行もある。後日顔見知りの銀行員の方から「どうしたんですかあ? 何かあったんですかあ?」と言われ穴があったら入りたい、カウンターの下にでももぐりたい気持ちになった。Anyway 主人の優しさと愛情に改めて感謝した。
運ばれた病院では脊髄に注射 等と言われ、以来どうしたらぎっくり腰にならないで済むかを真剣に考え研究した。それにはまず座る時は正座をするか猫背にならないよう足をまっすぐ伸ばして座る。そして経験して一番効いたのが散歩である。私たちの年齢(50代)ではジョギングは負担が大きい。できるだけてきぱきと散歩をするのがベストだそうな。医学的にも散歩をするとホルモンの働きが活性化して体のあちこちの機能がうまく作動する様になると言う。動かないとホルモンはもう必要ないと察知して作用しなくなるのだそうである。故に糖尿病他いろいろな疾患にも効果があることはテレビでも連日のように報じられている。
運動は山登りも含めて苦手というか、しんどい思いをするのが不得手なわたくしめ。だがただ歩くだけなら簡単簡単。そしてもっと良いことには、折々の変わり行く季節の景色の中で済んだ空気のシャワーを浴び、主人と共に歩きながら子供のことや人生の受け止め方、巷で起こっている事件やワンコのこと、その他いろいろなことをしゃべりまくりながら歩く早朝の一時は、何物にも変えがたい心の充足と健康を約束してくれる。それに夫婦だけではなく、ワンコがお供をすることによって、多少寒かろうが雨が降りそうであろうが行かねばならない状況を醸し出してくれる。全く有難い存在なのだ(時にトホホ)。散歩がワンコのためにも良いことはもちろん言うまでもない。亡くなったゴールデンのシオンやコーギーのボニーも長年お散歩のよき相棒だった。お陰様で以来一度もぎっくり腰にならずに済んでいる。
これからワンコをお飼いになる方、そしてすでに飼っている方、是非是非ご夫婦であるいはシングルでも結構です、ワンコと早朝のお散歩デートをお試し下さい。知らない人ともワンコといっしょならすぐにお友達になること請け合いです。お仕事で日中お留守番犬を余儀なくされているわんちゃんには是非ともウォーキングシップをさせてあげてください。宜しく御願いいたします。
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