5/8(日)
<子犬の離乳>
3/30に生まれたダックスの子犬7頭は全員無事に育った。ひとえに母犬アジールのお陰である。母犬の体の負担を考え早めに離乳の訓練をし親子の別離を果たした。
一般に、社会性を育てるために生後2ヶ月までは親兄弟と一緒であるべきと言われている。確かに兄弟についてはそうかも知れない。噛み合いによりお互いの「痛さ」を学び取るなど学習することがあることは事実だ。が親に関しては実際に2ヶ月まで一緒にいると親の方が嫌がって逃げまくる。徐々にはえつつある歯が乳房にあたるため痛いのと吸引力が多すぎて体の疲労が重なるためであろう。時に子犬に向かって威嚇したり、ひどいときは子犬を噛んだりする。おっぱいも前ほどには出なくなる。ゆえにダックスは生後40日目前後、ヨーキー、プードルは生後50日前後に母犬から離す。もちろん徐々にである。初めは母犬が日光浴&運動をしている3時間からスタートし、部屋の中の別ゲージに親を隔離して子犬たちだけの時間を延ばす。最後は夜寝るときだけサークルに一緒に入れ生後40〜50日目には完全に親子を分離する。母犬がいなくなった日、最初は気がつかない、だが事の異変に気づいた子からクウ〜ン、クウ〜ンと泣き始める。例え泣かなくとも一般に元気はなくなる。その日一日くらいは何頭かが隅に固まって寝ていることが多い。不安はストレスを生み、コンディッションを崩す。従って母犬のリタイアーの後は人間の出番なのである。少しでも子犬たちが元気になるようにとできるだけ明るく、そしてトーンアップして話しかける。「ママいないんだものね。どこにいっちゃったんだろうね〜。「おなかすいたよー」ってねー。でもみんなおりこうさんだねー。ちゃーんとごはんたべるんだものね。」と褒めてやると、わからないようでわかるのだ、次第に尻尾を振るようになる。さびしい気持ちが明るくなっていくのが手に取るようにわかるのだ。
以前尻尾を振ってこちらを見ているわんこを無視して通り過ぎることはわんこに対してたいへん失礼である、と言う文章を読んだことがあったが、まさしくそのとおりだと思う。人間同士朝会ったら「おはよう!」とあいさつするのが当たり前のように、わんこに会ったら同じようにあいさつすべきだと思う。わんこの目と目が合ったら言葉を発するのも当然であろう。犬舎では、朝起きると第1ナーサリー〜第4ナーサリーまで入って電気をつけわんこたちに挨拶をする。ついでに便の状態や元気の良し悪しをチェックしながら1頭1頭に声をかける。第2ナーサリーに入ると3/30生まれの7頭はいっせいに上段サークルの一面に走ってきてツバメの如く勢ぞろいした。チョコタン3頭、ブラックタン3頭、ゴールド1頭は数が多いせいか小ぶりではあるが1頭も落ちることなく全員元気に育った。皆似たような顔をしている。これまでにするのに帝王切開の母犬アジールはどんなにたいへんだったのだろうか。どれだけのおっぱいを提供し、どれだけのおしっことウンチを舐めて世話をしたのだろうかと思うと感慨深い。お譲りするファミリーにはこの母犬の苦労を決して無駄にすることなく大切に育ててもらいたいと切に願う。それはダックスに限らずどの犬種でも同じだ。7頭は今週中に東京のショップさんに旅立っていく。夫々が良いファミリーに引き取られることを願って・・・。
5/13(金)
<交配>
春は動物にとって繁殖の適期なのだろう、3月から4月にかけてプードルの交配の依頼が何件かあった。大概はおりこうさんで素直に交配に応じてくれるのだが、中には入れてきたキャリーに手を差し伸べたとたんガバッと噛まれることもある。オーナーさんが「この子はおとなしくてちゃーんと言うことを聞く子だから大丈夫ですよー」と言う子が案外あやしい。もっともわんこにしてみれば人間の都合でいつの間になんだか見知らぬ所に勝手に連れていかれるのだから無理もない。 しかし さすが我が犬舎のアシスタントYさん、彼女はわんこの訓練所に数年間住み込みで見習いをしてきた人だ。ものの見事にわんこを手なづけしっかと交配を済ませてくれる。犬舎に来たばかりの3年前に交配のやり方を教えたのだが、今ではYさんのほうが熟達している
実際、交配くらい忍耐を要するものはない。種牡に向かい、最初は「ほらお友達だよ〜、がんばろうね!」と猫撫で声で誘うのだが、あっちへおしっこをかけ、こっちへおしっこをかけ、戻ってきたと思ったらメス犬のおしりを押さえてしゃがんでいる私の口にチューをして、またどっかに行ってしまう。(私にチューしてどうするんだい、メス犬に注目してくれ・・・)と苦々しく思いながらも決して顔には出さず、モナリザの如く微笑みを保たなければならないのが辛い修行となる。オス犬は決して叱ってはいけないからだ。メスを抱っこして持ち上げ、「いいの?行っちゃうよ」とじらし作戦もやる。
交配後1ヶ月するとドップラーの超音波検査で妊娠の判定が可能だ。心臓の鼓動が映し出される仕組みになっているのだが、早めの妊娠確定は出産までの準備や心構えをより周到にさせる。4月に交配をしたわんちゃんのオーナー様方から先日来次々と「おめでた」の一報が入った。初めて愛犬を妊娠させるオーナー様も多々おり、まるで御自分の妊娠のように嬉しさ一杯で御報告くださるのである。あと1ヶ月どんな思いでいそいそと出産の準備をされるのだろうかと想像するとほほえましくなる。
昨日は体重2kgちょっとのプードルレッドの「はなちゃん」のオーナーさんからお電話をいただいた。「うんちをするような恰好をしているんだげど、いつもどおり散歩にでがげだほうがいいのすか?」(私)「ウンチの恰好しているのならもうでかけちゃだめですよ。お産は近いです。」しばらくしてまた電話・・・「なんだか足みたいなのがでてきたんだけど・・・」(私)「逆子だね。そしたら・・・まず・・・足だけひっぱっちゃー絶対だめですよ。陰部をめくるようにして・・・背中の皮にタオルかけてつまんで引っ張って・・・素手ではすべるから・・・」と説明したが、怖くて出来ない様子、近ければ手伝ってあげるのに・・・。車で1時間半では間に合わない・・・。逆子はああして、こうして、それからこれをして・・・と得意技がある。つい最近も、出てきた足が全く動かない逆子の子犬を無事生還させた。しかし、はなちゃんの1頭目はダメだったようだ。いわゆる「産道を作るためのワンコ」になったようだ。けれどそのお陰で2頭目、3頭目は無事に生まれてきた。3頭とも女の子だったそうだ。「おめでとうございます!よかったですねー。お赤飯炊いてお祝いしなくちゃーね」思わず言葉が出た。
よそ様のことを一緒に喜べることがなんだか至上の幸せに思えた瞬間だった・・・。
5/26(木)
<主人の事>
玉こん(玉こんにゃくのこと)を煮込んで焦がしてしまった。玉こんは、ダイエットの期間中必ず登場するアイテムで、麺つゆに削り節を入れて煮込むだけの簡単レシピだが、小腹がすいた時にかっ込んでもお腹がいっぱいになる割りに太らず、おまけに便通もよくなるという一石二鳥の優れものである。故に我が家ではたびたび登場する。だがしかしひとつ難点がある(注;私だけだが)。わんこの世話の合間に煮込むため、必ずといってよいほど煮ていることを忘れて焦がしてしまうのだ。過去を振り返ってまともな玉こんができたのは数えるしかない。このごろでは玉こんを煮る時には「よもや今回も?」といやな予感がする位だ。予感していながらまたもや焦がしてしまうこの愚かさよ。このダイアリーも、あわれな姿に「変身」してしまった玉こんの「焦げ」の部分を除き除き、泣く泣く残りの「まとも」な部分を食べながら書いている始末だ。(トホホ・・・)。
焦がした鍋をたわしで削り取りながらふと思った。奥さんが鍋を焦がしてご主人が反応するのに3通りあるのではと。第一は「なんで焦がすんだ。気をつけろ!」と叱責するタイプ。第2は「いいよ。鍋なんかまた買えばいいさ。」とやさしくフォローしてくれるタイプ。そして第3のタイプは・・・何も言わずにさりげなく、いつのまにか鍋の焦げをこそげ取ってきれいにしてくれているタイプ。 奥さんの鍋焦がしに反応するご主人の態度でご主人の人間習熟度&愛情度がわかるのだ。 わたくしのご主人様はどのタイプでしょう? 取りも直さず第3のタイプなのであります。我がご主人様は、かのラスベガスの基礎を築いた、ウォーレンビーティー主演の映画「バグジー」の主人公に男の美学を見出している愛妻家であります。愛する女のためには自分の命が危い、と知っていても女を信じて精一杯の愛を降り注ぐ・・・。 故にどんなに部屋が散らかっていようが一切文句を言ったことがない。「ほこりで死ぬことはないだろう」と自ら掃除してくれる。困った時には「白馬に乗った王子様」、どこからでも飛んできて私を助けてくれる。今では大分よれよれの王子様だが・・・。
子供は夫婦が互いを大切にする姿を見て他人を大切にすることを学ぶという。我が家では常に主人の姿を子供たちが見習ってきた。幼いころより口癖のように「お父さんのような人になってね」と言ってきたが、4人とも人としての生きる見本を主人に見出している。もの心がついたころより何かあると「お父さんに聞いてごらん」と必ず父親を通した。
一般に男の子と父親は張り合ってうまくいかないことが多いと言われるが、我が家では無縁だ。主人にぞんざいな言葉を吐く子供など一人もいない。とんでもない妻であり母親である私を投げ出さずに受け入れ愛してくれる主人の姿を見て子供たちは主人を尊敬し、また人を受け入れることを学んでいるのだ。
世の中の事件の根本原因を紐解いてみると行き着くところは全て「夫婦」にあることに気がつく。子供は「夫婦の和」でできたものだから心も「和」していなければ決してまっすぐには育たない。引きこもり、ニート、幼女誘拐殺人、女子監禁殺人、ドメスティックバイオレンス、強盗その他悪行の数々・・・。もとを糺せば全て原因は育った家庭にあり、夫婦にある。
Anyway,わんこの話題からははずれてしまったが、好きなわんこのお仕事を許し、手伝ってくれ、また必要に応じアドバイスしてくれる我がご主人様に改めて感謝! である。
5/31(火)
<共寝のススメ>
最近は仕事をする女性が増え、共働きが普通になっている。お年寄りの介護などの事情がある場合もあるが、今やお家に居れる専業主婦ほど優雅でリッチな身分はない、と言ってもよいだろう。だが専業主婦の割合は年々減る一方だ。
子犬をお引き受けいただく場合、理想的には1日中お家にどなたかが居られるご家庭が相応しい。特に幼犬の場合は躾けのこともあるし、環境の変化で食欲が落ちるため食べているか、また元気でいるかのチェックが必要だ。数年前までは当犬舎も「留守が多いご家庭へは子犬をお譲りできかねます」とHPに表示していた。
しかし、ある方の出会いで少し考えが変わった。譲渡後メールでご報告をいただいたり、その方のHPの日記をご紹介くださったりしてワンちゃんの近況が分かってきた。オーナーさんは朝から夜遅くまでお仕事に従事しておられる方であった。日曜日もやっと取れるくらい、という印象を受けた。ところがちゃんと子犬を育てているのである。小さい時にはご近所の方にわんちゃんのお昼ごはんをお願いしたようだが、以降は日中ずっとお留守番である。オーナーさんのお考えでサークルには入れずにお部屋に放して出かけられる。もちろん危ないものはよけておく。お仕事の日はわかるらしく「行ってくるからねー」と言うと追いかけることもなくあっさり諦めて自分の居場所に戻るそうだ。ところが休みの日にはわかるらしく、置いて出かけようものなら「何でわたしを置いていくのよ〜」と猛烈な攻撃をするのだそうだ。車の所まで行って「乗せてよ〜」と主張すると言う。日記を読み進めていくうちに涙が溢れ出てきた・・・(今もダイアリーを書きながら涙している)。 小さいのに何てけなげなんだろう、我慢強いんだろう・・・と。「〜ちゃん物語」という題の悲哀本が書けそうである。その後オーナーさんのお考えで日中少しでもさびしくないように、との配慮で2頭目の子犬をお求めいただき今は一緒にお留守番をしている。が、お仕事が終わってからのフォローにはずいぶんと心を砕いているのだろう。休みの日には、近くの公園に行ったり、ドッグカフェに連れて行って遊んであげているようだ。いわば、時間の長さではなく、限られた時間の中で精一杯愛情を降り注いでおられると解釈している。
我が家の長男にも高校の時から専属の愛犬がいる。「花子」と名付けられたダックスで受験の苦労を支えてくれた。その後大学入学と共に家を離れることになった長男は、それまで6人家族の賑やかさから一変してたった一人の生活を余儀なくされた。きっと言い知れない孤独感をいだいたのだろう、まもなく自宅に置いてきた愛犬「花子」を送ってくれとの申し出があった。以来、花子は大学在学中の6年間長男のマンションに同居することになったのだ。医系の授業は朝から夜までスケジュールが密である。授業のある日中、花子はそのほとんどが「お留守番」で占められた。その後就職し病院勤めになったが、長男は引き続き花子を研修先近くの自分のアパートに連れて行った。結果、「留守番」にはよりいっそうの拍車がかかるようになったのだ。研修医は朝7時半には出勤し、その晩の当直が明けても翌日の午前中引き続き担当の患者さんのケアーをしなければならない時もある。いつアパートに帰れるのかと思うほどハードな毎日であるようだ。当然その間花子はお留守番だ。 振り返ってみると花子の人生(犬生)は「お留守番の人生(犬生)」だったような気がする。花子はこの6月でまもなく9歳になる。
だがしかし、留守番の辛さをフォローできたのは、帰ってから遊んであげることと、更に加えて「一緒に寝る」ことではなかったかと確信するのである。一緒に寝ることで日中足りないスキンシップを埋め合せすることができる。人間の赤ちゃんでも同じこと、夫婦でも同じである。肌の触れ合いは互いの信頼感と情緒の安定をもたらすものだ。私自身も高校のとき初めて飼ったマルチーズのボニーとは結婚するまでの間ずっと寝起きを共にした。揺れ動く思春期に格好の癒し犬になったことは言うまでもない。わんこの躾け教室や躾け本で何と言っているかはわからないが、日中お留守の多い方は是非是非ご愛犬と一緒に寝ることをお勧めいたします。
*不許転載*Copyright(C) 2001 S.Miyazawa
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