アマンダおばさんの
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9月16日(土)

<嫁と姑>

先日はるばる広島から子犬の見学に来ていただいた。これまでも東京近辺の関東一帯からや、東北全般からの来訪者はよくあったが、名古屋や大阪から交配や子犬の見学のために空路で来られた方以外は、遠隔地からの来訪者はなかった。九州、沖縄、北海道、四国など遠い方は、インターネットの映像をご覧になって子犬をお決め下さっていた。が、広島から仙台までほぼ1日掛かりで、新幹線を乗り継いで来られたK様には頭が下がった。その日ティーカップの女の子をご覧になり、気に入っていただいたようで早速ご予約を頂戴した。かつて私自身も4人の小さな子供が居る身分ではあったが、子供たちを主人にお願いし、よく県内や東京を初めとしてあちこちにワンコを求めて旅に出たものだった。
 蛇足ながら当犬舎では大方は画像でご注文いただき子犬をお送りしている。「映像より実際のほうが可愛いです」、と言ってくださる方が多く有難いことだと思っている。
 このところワンコたちの世話&母のチェックの他に、長男の結婚式の用事で毎日目一杯の生活を余儀なくされている。長男は県外の総合病院務めで、地方の医師不足のためか、かなりこき使われているようで正にぼろぼろ状態だ。何しろ休みの日がない。やっと月末にお盆休みが取れるとのこと。お盆といえば夏に決っているのに、秋に入ってお盆休みとはこれ如何に? まあ人様のお役に立てるのは良いけれど、どうぞお手柔らかに。
 その長男がこの11月に結婚することになった。お相手は同じ大学出身のお嬢さんだ。出席番号が隣り合わせで、学生時代の住まいも道路を隔てた隣のアパートだった。ため、お付き合いは1年の時からの、なが〜いご縁になる。未来のお嫁さんになるこのお嬢さんだが、私は彼女のことをとても気に入っている。
  まず、第一に謙虚である。とかく女医さんは偉そうな人が多い中、彼女は学生時代から医学生仲間からだけではなく、同大学の看護科の学生さんからも慕われていたようだ。勉学には苦戦し、留年や国試落ちなどで人の何倍か多めに勉強をしている努力家?だ。が、それだけ苦難にめげない七転び八起きの根性を持っているということになる。更に動機がすばらしい。小さいときテレビで見たアフリカの難民キャンプで困っている人たちを助けたいと(本人曰く)ない頭を振り絞って挑戦したのだった。自分のこと以上に他人に思いやりを示せる人柄には好感が持てる。病院の患者さんからも「良くしてもらう」と頼りにされているようだ。
 第二に素直である。私は3人の男の子たちに物心ついたときから嫁選びの教育をしてきた。「お嫁さんは決して外見で選んではいけないよ。顔は普通で良し。一番大切なのは素直であること。これが一番。女性の本性は素直なんだから。その次には賢いこと。」そして続けた「つまり・・・お母さんと正反対の人を選べばいいのさ。」こう言うと、それまできょとんとして何気なしに聞いていた3人が、「なるほど」と言って納得するのでありました(顔は正反対とはいえないが)。事あるごとに言っているとちゃーんと子供は覚えていてインプットされているものである。長男は私の理想に近いお嫁さんを選んでくれた。

 よほど好き合っているのか、長男の行く先々♪どーこでもついてくーメエーメエーひつじー♪状態で、昨年の国試浪人中もアルバイトをしながら長男の傍にいて勉強をした。その彼女も努力が実って、無事医師国家試験に受かり今年4月からは晴れて研修医の身になった。勤務先は長男のいる所から高速で1時間ほどの遠隔地に決った。電話してもなかなか通じず(病院では計測器が狂うので携帯は使用できない)やっと夜の10時半に「今帰りました」と電話が来たりする。お互い超過密スケデュールなはずなのに、何故か土曜日や日曜日の午後には一緒にいる。愛は時空を超えて・・・といったところであろうか。まあ仲がいいことは結構なことである。
 よく嫁姑の問題が提起される。みのもんたのお昼のワイドショーなどでも度々相談のテーマに取り上げられる。ワンコの世話をしながら、訴える人の話や相談に乗る方達の答え、そしてみのもんたの回答などを耳にする。結納は交わしたがまだ結婚前で正式に嫁姑の間柄になったわけではないし同居をしたこともないのでよくはわからないが、心構えとして思っていることは、結婚したらわが息子は息子であっても私のものではない。嫁さんのものであると思って間違いないと考えている。例え嫁が息子をぞんざいにしているように見えたり、ちゃんと世話をしていないように見えても嫁さんのものなのだから口を出すことはないのだ。だいたい私自身我が家に居たときから、それほど丁寧に息子の世話をしたことはないのだから私以下ということは考えにくい。嫁さんは私よりよっぽど気が利く人なので大丈夫だろう。それに共働きなのだから息子も自分のことは自分でやるべし。この点は日ごろの父親(主人)を見ているのですでに学習済み。
 次に問題になるのは嫁への嫉妬から嫁いびりをする姑。嫁と姑がうまくいかない原因の糸を手繰っていくと、大方この点に行き着くのではないか。そこにはふかーい因縁が潜んでいて結婚前の子育てにまで遡る。第一に同性同士は生物学的に見ても反目するものだ。私も思春期娘とは随分やりあった。だが女親にとって男の子の誕生は一種独特なものがある。あるときにはその一生涯を通じて近親相姦のような親子関係が成立する。独断と偏見かもしれないが、周囲を見回すと独身時代あまり男性にもてなかった女性が結婚して男の子を持つと近親の度合いが30%増幅される(どこから30%という数字が出てくるのか自分でもわからないが)。意識するしないに関わらず、自分が産んだ男の子にまるで初めての恋人が出来たかのように恋をしてしまうのだ。加えてご主人との関係があまりうまくいっていないか、あるいはそこまで至らなくとも理想の男性とちょっと違っていたりすると、息子との近親の度合いが更に40%増幅される。周知のように子供は、特に小さいうちは親が全てで万全の信頼を寄せてくる。かくして母親は意のままにならないご主人さんより、全てを自分に託してくる息子をかけがえのない恋人として愛してしまうのである。結果、極端な話母親が息子と共謀し父親に保険をかけて悲惨な結末の事件などが起こるのである。母子癒着が原因の事件は他にもある。青森で起きた女子監禁事件も母親の甘やかし&母子癒着が誘引になった。
 話を戻すが、言いたいことは、嫁姑の問題もはたまた子育ての問題も一番の元になるのは「夫婦の関係」だということである。上記の内容を逆に考えてみると、もし夫婦の関係がうまくいって和していたならば男の子が生まれたからといって、必要以上に子供に拘ることはない。注意深く面倒を見ることは必要だが、一定の距離を保って見るようになる。ご主人が出勤する、その時「ママ、お水飲みたい」と子供に言われたらどちらを取るか。
 正解はご主人なのだ。子供でしょ、と思った人は要注意。ご主人に合わせて靴を揃えたり、出勤を見送る様子を見てお父さんは偉いんだ、と子供は感じる。母親の姿を見て人を大切にすることを学ぶ。父母が仲のよい姿を見て人が和する姿を目で学ぶ。また、お母さんはお父さんの世話で構ってくれないと思うと自分で何とかしようと思う。お母さんに頼らないで自分で水を飲もうと工夫する。自立の始まりだ。
 だが、子供を優先にするとどうなるか。いつまでも母親を頼るようになり、なんでもやってくれるので我慢のできないわがままな子になる。父親より自分を優先した生活がやがて父親蔑視に繋がっていく。かくして母子が癒着し、居乍らにして父親不在の家庭が出来上がる。こうして育てられた男の子がやがて反抗期を迎える。父親中心のゆとりのある家庭に育った男の子は多少の嵐が到来しても何とか通過していく。だが、必要以上にバリア内に進入してくる母親;父親そっちのけで母子癒着の母親には、嫌悪や敵意、時に殺意さえ感じてしまうのだ。
 息子が結婚し嫁が来た。夫婦関係を大切にし、ご主人に目を向けている姑は息子が嫁と仲よくしていても気にならない。むしろ喜んで見ていれるのだ。もちろん嫉妬心など全くない。息子を受け入れてくれて有難うと感謝の気持ち一杯になる。だが、息子を溺愛し過保護にしてきた母親の目には嫁のすることが不足だらけに思えるのだ。そして息子が自分以外の女を愛している姿を見て嫉妬の炎が燃えあがる。かくして嫁姑の確執が出来上がる。主人を粗末にし、夫婦関係を大切に築いてこなかった姑にもはや居場所はない・・・。 何かこわ〜い話になってしまった。これだから結婚するのは嫌なんだ、子供を生むのはやめにしよう・・・などと思う若い人たちが増えると困るのでこの辺でやめに致します。
 とにもかくにも超忙しの息子たちが結婚するためには、私が動くしか手立てがない現状だ。お陰で毎週のようにワンコの世話の合間を駆け抜けて式場である地元で打ち合わせにはせ参じている。今日1日も「嫁いびりー」の姑にならないよう夫婦仲良く生活いたします・・・。



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9月24日(日)

<獣医師その2>

今通っている動物病院は朝9時から翌朝5時までやっている緊急病院だ。緊急といっても普通の診察も受け付ける。今までより良い病院を求めていろいろ渡り合ったが現在はこちらに定着している。理由は何点かある。その大きな部分は何箇所か病院を経営している院長先生の理念が私に合っているからだ。最初は多角経営をしているという先生にあまり好い印象を持たなかった。利益重視型かと。だがここ2年ほど通っているうちに少しずつそうでないことがわかってきた。利益がないと経営は成り立たないのでそれは人に任せているが、ご自分で可哀想なワンコやニャンコたちのボランティアを支援したり野生動物の保護にも力を入れている。
 獣医師はとかく自分の持論や信念に熱心なあまりそれ以外の話や特にブリーダーの意見には耳を貸さない御仁が多い。確かに知識や学問において獣医にかなうわけはない。手術してみろと言われてもできない。だが向上心のある獣医師は誰の意見にも謙虚に耳を貸すものだ。こちらの病院では常に何人かの医師がローテーションを組んで常駐しているが、院長の考えが徹底しているのかまず言葉使いが丁寧だ。ワンコの診察に、「便を取らせていただいて宜しいでしょうか?」とか「これでちょっと様子を見させていただきたいのですが、宜しいでしょうか?」と敬語を使う。人間の医師国家試験でも患者に接する態度が評価の対象になるが、目の前のワンコやニャンコを相手に、もちろん飼い主に対しても言っているのであろうが「便を取ります」や「様子を見ます」ではなく「〜させていただく」の敬語の使用は受ける側に好印象と動物を大切に扱っているという安心感を持たせる。私など何頭かまとめて診ていただくので両手一杯、鵜飼状態にキャリーを持っていくが、担当医師によっては帰るときにドアを開けてくれたりキャリーを車まで運んでくれる。診察中も知識のみを押し付けることなく「宮澤さんの今までの経験ではどうでしたか?」などと参考意見を聞いてくれたりする。
 
自分を擁護するわけではないが、これはとても重要なことだと思っている。獣医師がブリーダーも兼業している場合はベストかと思うが実際には無理であろう。免許でいえば学科と同時に実地も必要なのだ。知識だけでそれ以上一歩も譲らない獣医師に進歩はない。院長が居るときに周りに居る若手獣医師たちや看護師たちに向かい「みーんな、よく聞くように。宮澤さんの経験では〜の状態のときには〜をすると良いそうだ。よく覚えて置くように。」と何回か話されたことがあった。誤解の無いように願います。決していい気になって自慢しているのではない。私は自分がかなりのおっちょこちょいで全身これ不完全、欠点だらけの欠陥商品だということは百も承知である。私が言いたかったのは獣医師の姿勢である。動物という命ある生き物を助けるためには自分の殻を固守していてはいけないのだ。ブリーダーから、時には一般の飼い主さんからも参考意見を聞き、少しでも多くのことを学ぶ姿勢を常に持ち続けることが大切なことをここの病院は承知しているのだ。却ってそういう獣医師や動物病院のほうが信用できる。
 
私が行っている病院ではティーカッププードルは見慣れているが、全国にはまだまだ見たことがない獣医師がいる。潜入観念や偏見でいろいろとおっしゃる。が、チワワやヨーキーの極小の子やティーカッププードルをたくさん診てきた医師はその生態や扱いをちゃーんと心得ている。今回もティーカップより更に小さい超ティーカップについて食事をより効率的なものに変えたいと相談すると、「それでは・・・これとこれを混ぜて与えてください」とアドバイス下さった。言われた通りあげてみると、食べなかった超ティーカップが喜んで食べるようになった! そして他のティーカップたちにも同じものを与えたがお蔭様で1頭たりとも低血糖症になることなく元気一杯でオーナー様のところに空輸することが出来た。この獣医師には過去に数頭助かる見込みのない危篤の親犬を助けてもらったことがある。あるヨーキーなどは難産の末10日間昏睡状態に陥り点滴だけで生きていた。先生がもうこれ以上入院していても治る見込みはありませんからご自宅にお返しいたします、と言われて迎えに行った朝、驚くことに10日ぶりで意識が戻り首をもたげたのだった。その子は今すっかり元気になって犬舎にいる。他にもわからないことがあればうやむやにせずすぐに調べて文献をコピーし説明してくれる。私はこの先生を密かにご尊敬申し上げている。持論に固執して見たこともないティーカップを云々したりする懐の小ささとは対極を行く。
 
以前ティーカッププードルを譲渡させていただいたある方はそれまで極小サイズのプードルを17年間飼っていたそうだ。買った当時はティーカップと言う言葉さえなかった時代だ。ずっと1.5kg前後だったその小ぶりちゃんが17歳で亡くなった。寂しくて同じ極小のティーカップを再度飼おうとペットショップやブリーダーさんに聞いてみた。が、どこで尋ねても「ティーカップは未熟児で欠陥犬だから長生きはしませんよ。」と取り合ってくれず、またそういうところにはティーカップは居ないのでほとほと嫌になってしまっていたところです、と言うのだった。自分ところでは17年も長生きしてくれたし、1生のうちで病気らしい病気は1度もしたことがないんです。年に1回健康診断をかねてワクチンを打ちにいくのと、フィラリアの薬を貰いに行く位で亡くなる直前まで元気でしたよ。全く偏見もいいところですよねー。と話してくださったことがある。私のところのティーカップもひ弱なところは見られないどころか一番威張っていたりする。もちろん生き物だから完全無欠と言うことはないかもしれない。弱点があるかもしれない。けれど人間だって欠陥だらけだ。ワンコにだけ完璧を望むのはおかしい。
 とにかくキャパシティーの広い獣医師とお付き合いできて幸いである。

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